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2022/09/30

前期終業式

| by hiyamakta_s
 9月29日(木)は前期終業式でした。校長講話の内容です。
 今月はキャリア学習で色々な発表会がありました。将来活躍できる力がついたと思います。新執行部も立ち上がり新しい生徒会活動も始まりました。後期に向けて皆さんそれぞれ新しい気持ちで自分自身に期待を込めて、やりたいことに挑戦していって下さい。
 NHKの「最後の講義」という番組があって、人生最後だとして何を伝えたいかということをいろんな実力者を呼んで、若い人に話をしてもらうという番組があります。今日は東南アジアで医療活動をする吉岡秀人さんという人の話をしたいと思います。
 吉岡さんは30歳で一人でミャンマーに行き、全く医療の無いところで無償で医療活動を始めた人です。ミャンマーでお医者さんは吉岡さんただ一人。とても苦労されたようです。
 お医者さんなので当然沢山勉強されたと思いますが、高校時代は全く勉強しなかったそうです。自分が何をしたいか、どんな能力があるか、全くわからないまま生活していた。大学も浪人し予備校に行くのもギリギリで、5回目のテストでやっと入ることができたようです。予備校に入って、進路資料を見て、何故か医学部行けるかもと思ったようです。それを決めたときはとても不思議な感覚だったそうです。吉岡さんはそれを「感性の声」と呼んでいました。普段良いか悪いか考えて判断しているのは「理性の声」で、それは左脳しか使っていない。けれど「感性の声」は脳の全ての感覚、全脳を使っている、と吉岡さんは感じていて、とても大切で若い人には是非「感性の声を」大切にして欲しいと言っていました。
 突然の判断のようだけれども、少年時代に大坂万国博覧会で世界中の人が集まる傍らで戦争により手足を失って物乞いをしている元軍人さんの姿を見て、それが痛切に印象に残っていたのが影響していたのではないかと言っていました。子供ながら可哀想だという感情が強烈にあったのでしょう。ということで皆さんも今経験していることの、何が将来に影響を与えるか分かりません。心に残る経験は皆貴重だと思います。逆を言うと色々な事を経験できるように、自分で環境を作ることも必要と思います。
 ただ「感性の声」に従って努力するけれども目的が達成されない場合もあります。しかし、吉岡さんは本当の失敗は、目的が達成されないことではなく、やらないことだと言っています。目的が達成されなくても、実行していればそこに向かう志や努力や関係する友人などの様々なプロセス・経験が生じて、それが次のステップに繋がる。それを失うことの方がとても怖いことだと言っています。逆をいうとあまり結果は考えない方がいいかもしれない。やってみたいけど、理由がわからないとか、お金にならないからとか、あまりかっこよくないとか、そういうことが理由で漠然とやらないでいると、何も手に入らない、それはとてももったいないことだと言っています。
 ミャンマーには色んな難病を抱えた患者さんも来たそうです。頭蓋骨に穴が開いて脳が飛び出すような病気もある。ある少女の病気は鼻や口のまわりが凄い変形するものだったが、何とか手術で治した。助手はいない、夜2時間しか電気が付かないので、懐中電灯を持って貰って手術したそうです。少女がその後、結婚して子供を授かった時、吉岡さんに見せに来たそうです。多分手術していなければ、子供を見せに来ることはなかったろう。その時、吉岡さんは医者の目的がわかったそうです。「患者の人生の質を少しでも良くしてあげることだ」と気がついたそうです。時には本当に治らない病気がある、癌で顔半分が大きく垂れ下がっている少年は、もう末期で助からない、余命僅かだった。しかし、手術すれば家族で写真が撮れるかも知れない、幸福な思い出を作ることが出来るかも知れないと思い、すると人生の質が少しでも上がる。なんとか手術したかったけど本当に手遅れで手術することができなかった。しかし、吉岡さんは看護士さんが来るようになってから、その少年のところに行って励ますように頼んだそうです。雨期になると道が悪く、朝5時に出発して、帰りが夜の12時になるような訪問だったようです。「君はそれだけ、大切な存在だ」ということを教えてあげたかったそうです。そうやって患者の心が豊かになれば、生きている間だけではあるけど、その人の「人生の質」は上がると考えたそうです。
 「感性の声」に従って努力して、適わないこともあるけど、そうしたことによって次にやるべきステップが見えてくる。それはやらなければ決して見つからない。お医者さんの仕事は大変だけど、自分がやりたいからやっている。自分がやりたいことだからつらくても続けられる。しかし、それでも人の幸福に繋がるようなものでなければなかなか続けられない。でも、人は人の幸福の為に何かをしたいということは、皆生まれつき思っているものだ。だからそれを大切にし、行動を起こして自分の価値を知るべきだ、と吉岡さんはそう言っていました。
 人類が今平和なのか、平和でないのか、それをきちんと検証するためには、今の時代コンピューターが計算できるように数値化しなくてはならないんだけれども、そのためにどうしたらいいかということを、日本のWell-Being(生き生きと暮らすこと)を研究している石川善樹さんが仲間と考えた結果、それは「多様化」がどれだけあるかだという結論に至ったそうです。人種も文化も思想も色々多様化して存在するのが平和だというわけです。
 確かに世界を見ると争いが耐えない所は言論統制などが行われています。違う物を認めないということですね。今起きてる戦争もある国の言葉を使う住民に不利益を起こしているから、けしからんので領土を奪ってやるみないなことを言って始まっています。民族や思想など同じ種類の仲間で互いに励まし合って、生き甲斐を持つような関係はいいけど、他を否定するようなことになるととたんに争いになる。いじめなどもそうですねえ。グループが個人を仲間はずれにしていじめていることが多い。民族という本来は尊重されるべき言葉が、一歩間違うと危険な言葉になり得るのです。
 残念ながら世界は、多様性を受け入れることができない国が多い。日本は立派な民主国家と思うけど、たまに政治家でもうっかり日本はひとつの民族だと言っちゃう人もいますよね。それがうっかりレベルを超えると大変になる。完璧に多様性を認めている国の例は、シンガポールではないかということです。詳しいことは「13歳からの地政学」という本を是非読んでみて下さい。
 来月は50周年記念式典があります。北高のある場所は雄大な利別川の河川敷、南に遊楽部岳、北に狩場山を臨む素晴らしい環境の中に建っています。多くの開拓者が憧れた場所であり、荻野吟子さんはじめ社会に貢献する人材を輩出した地域の中にあります。
 皆さんも是非世界に目を向け、自分の「感性の声」に耳を傾けて行動起こして、社会に貢献したいという自分も見つけ、それを生き甲斐にしてもらいたいと思います。そしてそういう姿勢は、北高の先輩達が伝統・風土の中に守ってきたものにもあると感じていますので、是非それを皆さんの行動と共に未来に繋げていってもらいたいと思います。
 1年生2年生3年生は、これから上級学校訪問、見学旅行、就職・進学試験があります。引き続き感染対策には注意していけるように、全年次で取り組んでいきましょう。以上で終わります。


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